相続
相続人
被相続人の相続財産を承継する権利を有する者を相続人といいます。相続人となれる者は、民法の規定により決定され、これを法定相続人といいます。
民法の規定により、相続人として認められているのは、①配偶者、②子、③直系尊属、④兄弟姉妹です。
もっとも①の配偶者以外の相続人には順位があり、常に全員が相続人となるわけではありません。②子、③直系尊属、④兄弟姉妹の順に順位が決まっており、③の者は②の者が存在しない場合のみ相続人となり、④の者は②及び③の者が存在しない場合にのみ相続人となります。
一方で配偶者は常に相続人となります。
≪特別の寄与の制度の新設≫
相続人とならなかった被相続人の親族は、原則として被相続人の財産を承継することができません。しかし、相続人となれなかった親族が被相続人の生前に療養看護をいていたなどの実態があり、そのような親族の貢献を尊重すべく特別の寄与の制度が平成30年の法改正により新設されました。
特別の寄与の制度とは、相続人ではない被相続人の親族が被相続人の療養看護を行っていたというような特別の寄与が認められた場合、相続開始後にその特別の寄与に対する対価(特別寄与料)として相続人から金銭の支払いを受けることが出来るというものです(民法1050条。施行日(令和元年7月1日)以後に開始された相続について適用されます)。
この制度により、例えば亡くなった人の姉妹が療養看護を無償で行っていたとしても、故人の子ないし直系尊属が相続人となった場合、その姉妹は相続人にはなれず故人の財産を承継することはできませんが、療養看護の対価としての相当額を故人の相続人に対し請求することができることになります。
・手続
特別寄与料の定め方は、まず相続人との協議により、協議では決定しなかった場合には、特別寄与料を請求する者が家庭裁判所に協議に代わる審判の申立てをすることになります。
相続分
相続分とは、法により相続人とされる者に認められる相続財産の取得割合のことを指します。相続分の決定方法については、法定相続分と指定相続分という2種類のものがあります。
ア.法定相続分
法律の規定により決定される相続分を法定相続分といいます。
法定相続分は、相続人が誰であるかによってその割合が変動します(民法900条各号)。相続人が複数の場合、基本的にはまず配偶者の取り分が決まり、残りをその他の相続人の頭数で等分することになります。
①配偶者と被相続人の子が相続人の場合
→配偶者が2分の1/被相続人の子が2分の1を頭数で等分
②配偶者と被相続人の直系尊属が相続人の場合
→配偶者が3分の2/直系尊属が3分の1を頭数で等分
③配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人の場合
→配偶者が4分の3/兄弟姉妹が4分の1を頭数で等分
④配偶者のみが相続人の場合
→配偶者が相続財産全てについて相続分を有する
⑤配偶者の相続人がなく、子又は直系尊属もしくは兄弟姉妹のみが相続人となる場合
→子又は直系尊属もしくは兄弟姉妹が頭数で等分した割合により相続分が決定
イ.指定相続分
被相続人が遺言によって決定する相続分を指定相続分といいます(民法902条)。
相続分の修正
法定相続分は一般的抽象的に各相続人の相続分を定めたものであって、個別的事情によっては不公平な結果を生じさせてしまいます。実質的に公平な相続分を算定するために特別受益の持戻しや寄与分により相続分が修正される場合があります。
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相続財産
相続財産(遺産)とは、相続の対象として被相続人から相続人に承継される財産を指します。
相続の対象となるものの一例
財産:不動産、銀行預金など
権利:貸家の賃料請求権、慰謝料請求権、著作権など
債務:借金等の債務、貸家についての賃貸人としての義務など
被相続人の財産の中には相続の対象とならないものもあります。
・雇用契約上の地位など被相続人の一身に専属するもの
・仏壇や墓石等の祭祀財産